大晦日の手紙【モンゴル抑留者慰霊に尽力下さた駐モンゴル大使~井川原様の言霊】
鈴木富佐江様
歳末の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
両陛下がモンゴル御訪問されてすでに半年が経とうとしております。御訪問は、モンゴルの温かい歓迎を戴き、また多くの方々に支えられながら恙なく成功裏に終えられました。両陛下がとてもお喜びになり御満足されたことがなによりです。ありがたいことに、御訪問により、日本とモンゴル間の信頼関係をさらに盤石なものにして戴きましたことに改めて感謝いたしております。
その中で、両陛下が日本人死亡者慰霊碑を御慰霊された時のことは、今でも鮮明に胸に刻まれております。強い雨脚の中、両陛下には慰霊碑に御供花され、1分間の御黙祷を深く捧げて戴きました。その後、慰霊碑から見えるゲル地区を御一望された際、それまでかなり強く降り注いでいた雨がやんだことを御知りになった両陛下は、再び慰霊碑の前へと歩み戻られ、改めて深く御一礼され御慰霊して戴きました。まさしく、鈴木様が仰っていたとおり、「抑留者の魂が天空に集まり狂喜乱舞し雲をうち払ってくれたとしか思えない」ひと時でした。この時、モンゴル抑留中に望郷の念を抱きながら無念にも亡くなられたお父様を含む約1700名の日本人の犠牲者に向けて、両陛下による初の御慰霊が実現し、同時に、旧ソ連により抑留され大陸で亡くなられた日本人の方々に対する、初の天皇陛下による現地での御慰霊ともなりました。
その後、両陛下をご案内し、「祈りの広場」において、鈴木様と水落敏栄遺族協会会長を御紹介させて戴きましたが、その際、両陛下からじっくりと御心を寄せて戴いた上で、温かくお声をかけられたことは、ご存じのとおりです。誠におめでとうございました。お望みが叶ったことに対し、改めてお喜び申し上げます。
両陛下が、モンゴルの歴史、文化、伝統、自然などを貴ばれながら、各訪問先で親しく交流を綴られるご様子が日々両国で報じられましたが、両国関係史に燦然と輝く金字塔として刻まれた今回の御訪問は、過去から現在に至るまで築き上げてきた両国関係の来し方に改めて光をあてるとともに、両国関係の未来に向けた今後の行く末をも永遠に照らし続けていくものとなりました。
明年は「午(うま)」の年です。モンゴルの人々にとって馬は、古くから生活に深く根差した相棒であり、力強く、そして自由と繁栄の象徴でもあります。鈴木様にとりこの一年が、広大な草原を颯爽と駆ける馬のような、旺盛な活力と勢いに満ちた素晴らしい年となりますことを、心からお祈りいたしております。
ウランバートルではたびたび-30度を下回っております。日本でも寒波到来で本格的な冬を迎えておりますが、どうかお身体くれぐれもご自愛ください。
井川原 賢
